2021年12月5日
国立劇場で開催された『文楽鑑賞教室』を現地鑑賞。
前半は文楽の魅力を解説。
後半は『新版歌祭文(しんばんうたざいもん)~野崎村の段』です。
解説・文楽の魅力
文楽とは
江戸時代に成立した文楽は、人物の台詞・心境や物語の状況を表現する『太夫(たゆう)』の語りや『三味線』の音楽、生きているかのように操る『人形』、これらの三つから成り立つ芸能です。この三つの役割を『三業(さんぎょう)』といいます。
そして、文楽の世界は大きく三つ分類されます。歴史上の人物や事件を題材とし、主に武家の世界を描いた『時代物』、当時の事件や風俗に取材し、主に町人の世界を描いた、いわば当時の時代劇『世話物』、舞踊劇や音楽性豊かな『景事(けいごと)』です。
配布のパンフレットより
太夫(たゆう)
マイクを使わずに響き渡る圧倒的な声量で、一人で何役も語り分けます。
江戸時代に大坂(現在の大阪府)で誕生した語りの音楽(浄瑠璃)『義太夫節(ぎだゆうぶし)』。この義太夫節とともに、人形が演技する芸能が”人形浄瑠璃”文楽です。
『義太夫』とは、この芸能を生み出した竹本義太夫の名前に由来しています。人物の感情や情景を表現する太夫の語りは、文楽にとってとても大切なものです。
配布のパンフレットより
三味線(しゃみせん)
文楽の三味線は太棹(ふとざお)三味線といい、長唄(ながうた)などで使われる細棹(ほそざお)三味線より棹も糸も太く、低く大きな音が出ます。
三味線は基本的に譜面を見ず、暗譜して演奏します。
配布のパンフレットより
また、通常の正座より腰を低く落とした独特の座り方をしています。
人形(にんぎょう)
文楽は、一体の人形を三人で操るのが最大の特徴です。
これを『三人遣い(さんにんづかい)』といいます。『主(おも)遣い』が人形のかしら(頭の部分)と右手を、『左遣い』が人形の左手と小道具の出し入れを、『足遣い』が人形の両足を遣います。
文楽や歌舞伎には、「黒は見えない」という舞台上の約束があり、人形遣いは黒い頭巾と装束を身に付けて存在を消しているのです。
主遣いは、左遣いに『図(ず)』と言われる合図を、足遣いへは自分の腰の動きでそれぞれ人形の次の動きを伝えます。細やかな動きはこれらが一体となって生まれるのです。
配布のパンフレットより
文楽の魅力
解説 豊竹亘太夫さん(太夫)・鶴澤清公さん(三味線)
・文楽は江戸時代に大坂で生まれた。
正式名称『人形浄瑠璃文楽』
そのため、太夫は江戸時代の大阪弁で語る。
・『浄瑠璃』とは?
語り物の音楽の総称
→常磐津・清元・義太夫など
・老若男女を三味線と語りで伝える。
若い女性:三味線は早く、声は高く
年配女性:三味線はゆっくり、声は高いものから低いものまで
武士:三味線は力強く、声は野太く
・文楽の楽しみ方
太夫の語り
三味線の音色
人形の動き などなど…
新版歌祭文~野崎村の段
いわゆる、『三角関係』のお話です。
許嫁がいるのに奉公先の主人の娘といい仲になってしまう。
こういったことは、江戸時代によくあったことなのでしょうかね(笑)
久松・お染の心中する覚悟を見たおみつが、最後の最後で引き下がる場面は感動ものです。
お染を見たおみつが悋気を起こし、鏡を叩く・包丁でまな板を叩く。
ラスト・船頭さんの汗拭きなど、笑える部分もあり緩急がありました。
久松の父・久作が冒頭に購入した『お夏清十郎』の書籍がクライマックスに登場。
伏線もしっかり敷かれている素晴らしい作品でした。
まとめ
落語の中に出る文楽・浄瑠璃などで断片的には知ってましたが、実際に体験するとだいぶ印象が変わりました。
まず、落語の『寝床』のように下手な浄瑠璃ではない(当たり前か…(;’∀’))
太夫によって語り方が違うのも興味深いです。
この場面はこの太夫で、など得意な場面もあるのでしょうか。
太夫・三味線は一対、演芸の『浪曲』が思い浮かびます。
実際に浪曲は、浄瑠璃を始めとする伝統芸能が源流にあるようですね。
さらに太夫・三味線が『どんでん返し』で登場したのにも驚きました。
そして人形!
一体の人形を三人で扱うのは、相当大変なんじゃないかと思ってました。
が、非常に滑らかに動いており、まるで生きている人間かのようでした。
今回の演目は、落語や講談にありそうな人情話でとてもわかりやすかったです。
そういう意味では演芸にも近いかもしれないですね。
文楽、はまってしまいそうです(笑)
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