2022年9月28日
銀座・歌舞伎座へ行って参りました。
当日の公演は『神田松鯉・神田伯山歌舞伎座特撰講談会』
松鯉先生口演の『荒川十太夫』を10月大歌舞伎で上演
そして傘寿のお誕生日当日を記念して開催された公演です。
当日は昼夜二回公演、筆者は夜の部に伺いました。
昼の部は、開口一番が鯉花さんだったようです。
演目
神田梅之丞 出世の石段
神田伯山 中山安兵衛駆けつけ
安兵衛婿入り
~仲入り~
特別鼎談
神田松鯉✖神田伯山✖尾上松緑
(MC/吉崎典子)
~仲入り~
神田松鯉 荒川十太夫
まとめ
終演後に緞帳ではなく定式幕が閉じたので
「もしや?」と思い残っていたのですが
カーテンコールがありました。
カーテンコールでの鳴りやまない万雷の拍手は
私も生涯忘れることはないでしょう。
松鯉先生・伯山さん師弟の充実した笑顔が目に焼き付いてます。
当公演のために舞台には、松鯉先生をイメージした松と鯉の絵。
そして松鯉先生・伯山さんの紋が上手下手に描かれてました。
1925年の二代目大島伯鶴以来、講談師として歌舞伎座の舞台に立たれたお二方。
この日が伝説の一日になったことは疑いの余地もありません。
これからお二方がどこへ向かっていくのか、楽しみでならないです!
梅之丞さん 出世の石段
梅之丞さんとは、某公演で一度お話してましたが高座を観るのは初。
この大舞台で開口一番を務められるのに、淀みのない読み口で
しっかり客席を引き付ける高座は、すでにキャリア3~4年の貫禄がありました。
仕事ができるというお話は伺ってましたが、高座も抜群ですね!
伯山さん 安兵衛駆けつけ~婿入り
揚げ幕チャリーンと歌舞伎座の花道から入場。
毎日酒を飲んだくれている落語の主人公のような安兵衛が
講談の主人公へガラッと変わる瞬間!
カッコいいですね~!
安兵衛宅の隣に住んでいる年配の女性に
「ババア、ババア」と悪態をつく安兵衛と、
妻娘から決闘の仔細を聞いていた堀部金丸が
あっちにこっちに感情を振られる様子には笑いました。
中山(堀部)安兵衛は元々越後国新発田藩の出身。
赤穂藩に仕官したとは言え、いわゆる『赤穂事件』では
離脱しても後ろ指は差されなさそうではあります。
が、今回の口演を聞いて赤穂と命運を共にした理由が
はっきりとわかりました。
浅野内匠頭との謁見時に、事は起こっていたのですね~。
あそこまでの温情をいただいたのであれば
最期まで尽くそうという武士の情けにもなろうというものですね。
泥酔した安兵衛に、羽織をそっとかける内匠頭は
優しいまなざしを送っていたのでしょうか。
安兵衛関連で、松之丞時代に故郷の新発田市で
口演された事を語って下さりました。
中央義士会の方が語る真実にどんよりした空気で
高座に上がったお話は面白すぎますね。
仲入り
特別鼎談
松鯉先生・伯山さん・吉崎さんが舞台に。
(以下、敬称略)
松鯉 ご挨拶
お客様に生かされているのが改めて分かった。
本当にありがとうございます。
尾上松緑さん登場
伯山 昼の部と夜の部の間に、歌舞伎『荒川十太夫』の稽古風景を見学した。
荒川十太夫は身分は低いが、松緑さん偉いので…
松緑 まず弟子を怒鳴りつけるところから始まった。
お恥ずかしい所を…
伯山 スリリングな稽古を見た
松鯉 それに比べると、伯山への稽古は緩すぎる(笑)
吉崎 松鯉先生傘寿おめでとうございます(開場からも拍手)
松鯉 いつの間にか傘寿になった。気持ちはまだ青年。
耳は遠くなるし、歯はボロボロになるし
伯山 師匠、それは青年って言わないんじゃ…
松鯉 『ハート』はまだ青年
先日ご出演したEテレ『ワルイコあつまれ』
日本酒の話から、松緑さんからもらった日本酒のお話に
松鯉 (日本酒はお米のジュースだが)もったいなくて飲めない
松緑 いやいや、お早いうちに是非飲んでください。
松緑 落語では思わないが、講談を聴くと『歌舞伎でやってみたい』となる。
講談=一人何役を、歌舞伎では一人一役。
登場人物の心の空白を埋める作業を今やっている。
吉崎 十太夫の歌舞伎化についてはどういう心境か?
松鯉 とても嬉しい、生涯忘れない。
松鯉 今日のために弟子たちが楽屋のれんをプレゼントしてくれた。
伯山 心境はどうですか?
松鯉 嬉しい、ありがとう。
伯山 地方に(のれんを)持っていく?
松鯉 できるだけの楽屋ある?
それだけの公演を、またやりましょう!
伯山 今日の舞台は今後どうする?
松緑 残すと思う。次回の公演があれば使うでしょう。
団十郎の襲名披露で使うかも?(笑)
吉崎 今後の講談界について
松鯉 若い人が活躍しているので、足を引っ張らないようにしたい。
(鯉花さんが来年二つ目に昇進予定で、松鯉先生の弟子では前座がいなくなる)
伯山 梅之丞さん・青之丞さんを『共有前座』に…
今後は前座とりますか?
松鯉 真打まで見届けるのが師匠の責任。
弟子が前座の時に亡くなった先輩もたくさん見てるので…
客席 「真打まで大丈夫!」 伯山「なるほど…」
松緑 (納得したら)ダメじゃないか
吉崎 今後、講談を歌舞伎化したいものはあるか?
松緑 「鹿島の棒祭り」「違袖の音吉」「鼓ヶ滝」
松鯉 「木村岡右衛門」もいいかもしれない
松緑 講談は宝の山と言うが、本当にその通りだと思う。
吉崎 連続物について
松鯉 連続物は講談のバックボーン
保存をしなければならないので、弟子に伝えていきたい
伯山 『伯山』を継いだ瞬間から、次郎長の継承は宿命になっている。
が、コンプライアンスがあるので、時流は読まなければならない。
松鯉 師匠(二代目山陽)から聞いたが、三代目伯山の次郎長が
歌舞伎化されたことがある。
吉崎 (講談)荒川十太夫の見どころについて
松鯉 男の美学・人間としての生き方
惻隠の情・忖度・長いものに巻かれない
弱い者に暖かいまなざしを送る
伯山 女性が出てくるが、女性の美学もある。
これからやるのにハードルを上げに上げていますね。
吉崎 (歌舞伎)荒川十太夫の見どころについて
松緑 男の美学・侍の美学、忠義が詰まったもの
悪人が出てこないので、終演後に気持ちが暖かくなる
あとは、お二方に泥を塗らないようにやっていきたい
仲入り
松鯉先生 荒川十太夫
松鯉先生も、揚げ幕チャリーンと花道から入場。
50数年ぶりに立つ歌舞伎座の舞台。
どのような気持ちだったのでしょうね。
『だまされて心地よく咲く室の梅』
松鯉先生で義士伝と言えば、末広亭の年末興行ですね。
筆者も現地で荒川十太夫他数々の義士伝を聴きました。
が、今回の『荒川十太夫』は、それよりも…
いや、これまで聴いたどの講談よりも圧倒的で
白眉の高座でした。
冒頭に年号を言い間違えたのは
緊張している客席をリラックスさせるため
あえてやったのかな?(笑)
おまけ1
松鯉先生・伯山さんが登場した、歌舞伎座の花道


おまけ2
歌舞伎座の緞帳と定式幕


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