第2回神田松鯉のこのネタを聴きたい5/22~人間国宝の十八番「勧進帳」

神田松鯉は1988年に文化庁芸術祭賞を受賞している。その際に読んだのが『源平盛衰記』の内、「扇の的」と「勧進帳」だった。どちらも難しい読み物だが、特に「勧進帳」は松鯉がいまだどの弟子にも教えていないほどである。一門の弟子以外には教えない、と公言している十八番であり、松之丞にとっての現時点での最重要課題といっていい。

神田松之丞(現・六代目神田伯山) 「絶滅危惧種、講談師を生きる」より

2021年5月22日
浅草・浅草見番にて開催された「第2回神田松鯉のこのネタが聴きたい」を現地鑑賞。

元々は2020年5月27日に開催予定でしたが、昨今の事情もあり1年延期。
この日の開催となりました。

十八番の「勧進帳」という事で前日から興奮が抑えきれません(笑)
そして、記事を書いてる公演翌日も余韻が残ってます。

演目

神田松鯉 勧進帳
仲入り換気休憩
神田松鯉 芸談

経緯

それは、2020年1月に届いた一通のDMから始まりました。
内容は「神田松鯉先生のこのネタを聴きたい」という会のお誘い。
演目は勧進帳+芸談。そしてクローズドの会という事。

Σ(゚Д゚)
か…かかかか勧進帳!?
冒頭の「絶滅危惧種、講談師を生きる」を丁度読了し、何が何でも聴きたいと思っていた矢先の連絡。
これは天啓と感じ、7000円の木戸銭を惜しみなくつぎ込むことにしました。

後に分かった事なのですが、ご連絡頂いたのは演芸作家の木積秀公さん。
非礼の数々を反省しなければならないです。

まとめ

非常に聴きごたえのある公演でした。
人間国宝の十八番を聴ける日が来るとは思っておらず、そのすべてが神々しかったです。

歌舞伎・能楽含めて、今回「勧進帳」を初めて拝聴。
松鯉先生の高座が今後のベンチマークになると思います。
願わくばまた聴きたいなあ。

「此花千鳥亭でも高座を!」と申し上げた手前、今回の騒動が終息したら何か考えなければならないかなあと勝手に考えてます(笑)

松鯉先生・勧進帳

「勧進帳」「弁慶」というと誰を思い浮かべますでしょうか。

私が遠い記憶にあるのは、日本テレビ年末時代劇「源義経」の里見浩太朗さん。
近年では大河ドラマ「義経」の松平健さん。
2022年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では菅田将暉さんが弁慶を演じられるそうです。

赤塚不二夫さんの葬儀でタモリさんの弔辞が白紙だったことから、「現代の勧進帳」と呼ばれたこともありますね。
ちなみに、タモリさんのマネージャー(当時)の名前はトガシさんなのだとか。

しかし、今回の高座を聴いて「勧進帳と言えば神田松鯉」と書き換えられました。

言葉が見つからないですね。あれが「芸」と言うのでしょうか。
休憩時間に少し落ち着きましたが、鳥肌が立ちっぱなしでした。
歌舞伎役者としての経験に裏打ちされた説得力抜群の高座。

特に関守である富樫と弁慶の「山伏問答」は、両名鬼気迫る表情が脳裏に焼き付いてます。
袂を持って「勧進帳読み上げ」をする松鯉先生の姿は弁慶そのもの。

昔から大事にされていた「惻隠(そくいん)の情」という、相手の立場や気持ちを慮って行動する男たちの情けが描かれています。

神田松鯉 人生を豊かにしたい人のための講談より

主人を助けるため、金剛杖で義経を殴る武蔵。
それを見て涙を堪えられず、正体を知りつつも関所を通す富樫。
まさに男の情けと言った場面で心が震えました。

物語が起こった「安宅の関」
現地にもいつか伺いたいと考えてます。

仲入りと換気

松鯉先生・芸談

箇条書きで記述します。

・山伏問答は講談から歌舞伎へ?
 歌舞伎の勧進帳は、能の「安宅」と講談の「勧進帳」を掛け合わせた。
 「山伏問答」は講談が由来。

・勧進帳はどなたから稽古をつけてもらったか?
 馬場光陽先生から(馬場光陽先生は二代目神田山陽先生の客分)
 扇の的など軍談も馬場先生から。

・馬場先生の稽古について
 テープ録音不可。メモはOKなので何度も通った。
 稽古をする前に仏壇に手を合わせ、終わったら一合お酒を飲ませてくれた。

・男の花道について
 六代目貞丈先生から。
 元は「名医と名優」という演題だが、「男の花道」という映画がヒットしたから。

・勧進帳の継承について
 伯山さんから申し込みはある。
 忙しいのに稽古に来る頻度が一番高いのが伯山さん。

・松鯉先生が持っているネタの継承について
 一人がすべて継承するのではなく、分散して継承していけばいい。

・松鯉先生が復活させたネタについて
 「荒川十太夫」「梶川与惣兵衛」など。
 「小田小右衛門」「梶川屏風回し」という似た演目もある。

・円朝作品を講談にする際の心構え
 自分がやりやすいように、少し改変した。

・ネタの改変について
 最初は教えてもらった師匠に失礼だから、習った通りにやっていた。
 昇華して自分のネタに変えていく事が重要。
 「発展のないところに伝統はない」

・講談はどれくらいのキャパがやりやすいか?
 150~200くらいが理想(旧本牧亭もそれくらいのキャパだったそうです)
 現在はマスクで表情が見えないからわかりづらい。その点は残念。

旭日小綬章受勲
 人間国宝の時もそうだったが、天皇陛下にお目通りできないのが残念。
 「時の帝」なので、御尊顔を拝したかった。

・此花千鳥亭にも是非出演してほしい(当方より)
 声を掛けてくれれば出演する。
 これまでは機会がなかったので。

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