2020年10月26日発売
神田松鯉先生の著書「人生を豊かにしたいための講談」を拝読しました。
松鯉先生は1970年に二代目神田山陽先生に入門。
講談師としては2020年で活動50周年です。
2019年に「講談」重要無形文化財(人間国宝)に認定されました。
特長
松鯉先生が半世紀以上携わった講談について解説しております。
本書は講談の網羅的な入門書でもあり、現在の松鯉先生のお考えも随所にちりばめられております。
テーマは7つ
第一章 講談と落語はどこが違うのか
P8~13
第二章 講談の魅力
第三章 講談はどこで聞けるのか
第四章 講談の有名な話は
第五章 講談師の修業とは
第六章 講談の歴史
第七章 講談古川柳
こんな方におすすめ
Picup
辻講釈
江戸時代初期には、失業した武士が軍談を道端(=辻・つじ)で人々に聞かせて生活の糧を得る浪人が大勢産まれました。
P27
余興もない時代、それらは「辻講釈」と呼ばれ庶民に広く流行しました。
上方落語も辻噺から始ったというのは存じておりましたが、「辻講釈」というのは初耳でした。
確かに戦場で戦っていた生々しい軍談なら、聴き入ってしまう方も多そうです。
ちなみに、元黒田家臣で大阪の陣の「五人組」後藤又兵衛も辻講釈をしていた事があったそうです。
講談師は記者・レポーターであり、ニュースキャスターだった
いわゆる「赤穂義士の討ち入り」は歌舞伎より早く講談が読まれていたそうです。
当時は今のようにインターネットやテレビはありませんから、講談師が張扇を叩きながら全国に広げたのかもしれませんね。
「講釈師見てきたような嘘をつき」とは言いますが、嘘をつくにも土台がないと話が破綻してしまいますので、取材には余念がなかったのでしょう。
江戸時代には講談師が800名程存在していたそうなので、協力して現場を見て回ったのかも?
ちなみに宝井馬琴先生によると、この川柳は「講釈師見てきた上で嘘をつき」が正しいと仰っていたそうです。
講談をより楽しむには日本の歴史に興味を持つ
講談は歴史上の出来事、実在の人物が基になっている事が多いので、
歴史を学べば更に楽しめるのではないでしょうか。
私自身も時間があるときは、講談や落語の舞台になった場所、歴史上の人物の生家・墓所などを尋ねるようにしております。
まとめ
非常に読み応えのある一冊でした。
「講談の歴史的名著」というのは過言ではないですね。
現在ある寄席のプログラムは、講談が土台を作っていたというのも新たな気づきです。
考えてみれば落語より講談の方がずっと歴史は古いので、それもそうかと納得しました。
本誌の中で松鯉先生が「好きなネタ」と仰っていた勧進帳。
いつか聴いてみたいなあと感じました。
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