夜の蝉~円紫さんと私シリーズ第二作

北村薫さん作 「夜の蝉」を拝読。
「円紫さんと私」シリーズ第二作にして、第44回日本推理作家協会賞受賞作品です。

例によって探偵役の春桜亭円紫(しゅんおうていえんし)師匠と、助手役の20歳になった「私」が、今回3つのミステリーを紐解いていきます。

ミステリー小説ですが、殺人の場面がないので読み終えた後に良い爽快感がありました。

朧夜の底

主要人物:高岡正子さん(正ちゃん)、庄司江美さん(江美ちゃん)、「安藤さん」

前半は正ちゃんが創作吟サークルの舞台に立つので、江美ちゃんと観に行く話。

そこで出会った「恰好いい」安藤さんから、ソログープの作品『小悪魔』を借りました。返す際にお茶をしましたが、実は安藤さんは本名ではなく…

後半は正ちゃんのバイト先である書店で出逢った奇妙な出来事について、円紫師匠も加わって謎を解いていきます。

書棚の本が逆さまになっているので見てみると、表紙と内容が一致しておりませんでした。どういうことか思案している「私」に対し、円紫師匠の出した答えは…

自己の<合理化>
悪意を悪意と思わない状態に陥っている人、現代では散見されてますね。
自己をしっかりもってそうならないように気をつけたいと思います。

円紫師匠の演目は、山崎屋でした。

六月の花嫁

主要人物:庄司江美さん(江美ちゃん)、峰ゆかりさん、葛西さん、吉村さん

「私」と円紫さんが話している中での回想劇として展開していきます。
1年前の軽井沢への江美ちゃん・ゆかりさんのWデートに、結果としてだしに使われてしまった形です。

内容は「チェスのクイーン」「卵」「鏡」という『鏡の国のアリス』三題噺。
画策した江美ちゃんは後日、重大な事を「私」に告白します。

回想を話しているだけで、この事を看破する円紫師匠はどれだけ頭の切れる人なんだ!!と仰天しました。
今回の作品ではこの話が一番好きですね。

夜の蝉

主要人物:「私」の姉、三木さん、沢井さん、大貫さん(いずれも姉の勤務先にいる人物)

前作から伏線を張られていた、美人のお姉さんが満を持しての登場。

前半はお姉さんの負の感情が出る別れ話について。
彼氏の三木さんとデートの約束をしていた歌舞伎座で「おばけ」が出た!?

後半は謎解きです。今回は身内の話ということもあり、円紫師匠も言葉を選んでいたことがとても印象的でした。女性の嫉妬は怖いですね…(;’∀’)

この話を通じて、微妙だった姉妹の距離感が埋められていく様子が微笑ましかったです。「夜の蝉」そういう事だったのか。

エピローグでは姉妹旅行、そして「私」のいつもと違う一面が見られます(´▽`)

円紫師匠の演目は「つるつる」

まとめ

全体のテーマは「時流」でしょうか。
主人公「私」自身の感情、細かい描写がよかったです。

そして、今回も円紫師匠の謎解きは健在。
次作はどのような展開となるのか、楽しみに読んでいきたいと思います!

夜の蝉・北村薫

引用元・東京創元社の書籍ページ

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