2020年12月13日
新宿末広亭夜の部に行って参りました。
主任は神田伯山さん。このご時世でも客席を満員にする寄席の大スターです。
前座の松麻呂さんも合わせると講談4席!
希光さんのまくらから、とてもいい流れで伯山さんへ繋がりました。
演目
神田松麻呂 灘島の決闘(寛永宮本武蔵伝)
笑福亭希光 レジスタンス
きょうこ 和妻
柳亭小痴楽 真田小僧
古今亭今輔 雑学刑事(ざつがくデカ)
マグナム小林 バイオリン漫談
三遊亭萬橘 代書屋
~換気小休憩~
神田阿久鯉 誉れの梅花(寛永三馬術)
母心 漫才
三遊亭円馬 つる
神田松鯉 河内山宗俊~玉子の強請(天保六花撰)
~仲入り~
桂鷹治 のめる
三遊亭遊雀 替り目
立川談幸 茶の湯
翁屋喜楽・喜乃 太神楽
神田伯山 大高源吾(赤穂義士銘々伝)

希光さん・レジスタンス
「裏舞台は松麻呂殺し」
12月11日の初日は楽屋メンバーが多く残っていました。そうなるとうるさくなるのが常。
伯山さんの高座中、うるさい楽屋に激怒した松鯉先生は、松麻呂さんに注意をしたそうです。
レジ打ちの新人さいとうくんは、店長にインカムで注意されております。
妙にフレンドリーで話しかけてくるおばさん。
落語好きで時そばのように代金100円ごまかそうとするおばあちゃん。
英単語を直そうとする外国人、そしていちゃもんをつけてくる客。
最終的に、お客さんに回されたさいとーくんですが…
レジ打ちも大変だなあ。
小痴楽さん・真田小僧
萬橘さんの告発は伯山ティービィーをご確認ください(笑)
Twitterで「義士伝やりたいなあ」と言ってた伯山さんに対し、松鯉先生やってくんねえかなあとぼやいておりました。
おかみさんと留守中に来たおじさんとの秘め事を聞きたい父親。
先にお足を払ってと言う金坊ですが、「寄席は先にお金をもらうからやりたい放題できる」と毒づいておりました。
お足をもらったときの「ありがとう」がかわいくて、何となく美空ひばりさんを真似る青木隆治さんに聞こえました。
今輔さん・雑学刑事
クイズ好きの今輔さん。
以前「アタック25」に出場したことがあるそうです。
「着物を」とうことで黒紋付を着たところ、本名だったため微妙な反応とか。
雑学刑事は、クイズが好きな刑事が銀行強盗と対峙するお話です。
様々な雑学を披露した刑事は、犯人を更生させる事に成功します…
落語でありながらも勉強になりました。
あれとあれは、クリミア戦争が発祥だったんですねー。
「刑務所へ行きたいかー!」
「懲役は怖くないかー!」どこかで聞いたようなセリフです(;’∀’)
マグナム小林さん・バイオリン漫談
ご存じバイオリン漫談。
タップダンスをしながらバイオリンを弾くという唯一無二の芸です。
暴れん坊将軍、ラデツキー行進曲、天国と地獄。
どれも絶品でした。
萬橘さん・代書屋
「私は尊敬されたいんです!」こちらも伯山ティービィーを(笑)
機種変更をずっと「機械変更」と間違えていた場面で客席は最高潮に。
当日、一番笑いを掻っ攫っていたと思います。
萬橘さんの代書屋はぶっ飛んでて好きなんですよね。
訛りの強いお客さんや、主張しないお客さん。個性的なキャラが際立っております。
ネタの中で、「沢辺勇仁郎」君(小痴楽さんの本名)が登場。
昨年の小痴楽披露興行を思い出しました。
換気小休憩
阿久鯉さん・誉れの梅花
開口一番、萬橘さんへのコメントが面白かったです。
誉れの梅花は、間垣平九郎という後の馬術名人が出世物語です。
将軍家光より愛宕山山頂の梅花の折り取りを命令された家臣でしたが、馬が石段を登り切れず転げ落ちてしまい立て続けに三名失う事態。
腹心である松平伊豆守は一旦帰る事を提案し、家光は了承。
「ごきかーん!」の声が響く中、「あいやしばらくー!」という空気を読まない大声が響き渡ります。
間垣はどう石段を登ったのでしょうか…
このネタは昨年12月、神田鯉栄さんが披露目以外で寄席初主任を務めた際、その初日に読まれした。
今年も主任として、そしてこの芝居にも顔付けされておりましたが体調不良により休養。
阿久鯉さんの姿に鯉栄さんの姿が重なり、目頭が熱くなりました。
母心さん・漫才
図らずも二日連続となった母心さん。なんと末広亭初出演だったそうです。
渋谷で300人キャパの単独ライブが満員でしたが、そのうち9割が浅草のお客さんだったとか。
日本舞踊の名取であるボケの川嶋さんですが、今回限り!?のぼやきが聞けました。
そりゃそうだよなあと納得できる内容。決して口外はできないですが(;’∀’)
今回は歌舞伎を題材にしたネタ。
今流行っているのが数百年後歌舞伎のネタになったら?という感じでした。
キセルは電子タバコ、小判はpaypay、電話はスマホ、満員電車やあんなことも流行っていた!?
円馬さん・つる
つるは20年でつがいに→千年生きるとしたらあと900年生きる?
首長鳥がつるになった由来を聞いて、ありがとうございます。
とは言いながら、「くだらねえなあ」と吐き捨てる八五郎でした。
大昔、ばくはつの老人…着脱の老人が浜辺のガン病棟で…(;’∀’)
松鯉先生・玉子の強請
「この続きはまた明日」
江戸っ子は「どうして今日やてくるるるれないんだ!」とせっかちなため、翌日も有給取ってまで講釈場に足を運んだのだとか。ただ、翌日面白かったかというと…
寄席の高座でよく読まれている玉子の強請。
初めて聴くことができました。
御数寄屋坊主の河内山宗俊は、ある問屋で「病人の友人のために生卵を持って行きたい」と卵を見ていたのですが、番頭が目を話した隙に自分で持っていた卵を山の中に。
その後、番頭の見ている前でその卵を袂に入れてしまいました。
当然番頭も見ているので、言い合いになってしまいます。
主人も出て来る騒ぎになってしまいましたが、宗俊が持っていたのはゆで卵。
それをネタに100両むしり取られるのでした。
仲入り
鷹治さん・のめる
トリの伯山さんは、人を殺す演目なのかそうじゃないのか。
楽屋で賭けが行われていた!?そうです。
口癖をもつ二人が賭けをして、言ってしまったら罰金を支払うという約束をしました。
一人の口癖は「のめる」、もう一人は「つまらん」という口癖の半公。
なんとか「つまらん」を言わせたい男はご隠居のもとを訪ねます。
入るなり「首長鳥の由来か?」と聞かれた男ですが、
つまらんを言わせるための知恵を授かります。
一度「のめる」を言わせたものの、絶対に詰め切れない詰め将棋で悩み「つまらないよ」と言ってしまった半公。手の込んだ芝居に感心し、倍額払いますが…
遊雀さん・替り目
小噺「朝まで飲んじゃった」を披露されてご満悦の遊雀師匠。
「新宿のお客さんはいいお客さんで、楽屋のみんな涙してる」と本音?が出ておりました。
駄々をこねて「言いすぎました」と言い泣き出す亭主。
とてもかわいいですね。
お酒を飲んだ後の「おいちい」が聞けたので、それだけで満足です!
談幸さん・茶の湯
「風流だなあ」
大店の元旦那は家督を譲り隠居。
小僧のさだきちを伴い、根岸で暮らし始めましたが退屈な毎日でした。
退屈しのぎに「おかしたべましょーよー」と、さだきちにちせがまれた茶の湯をやる事に。
抹茶ではなく青きな粉を買ってきてしまったので、混ぜても泡立つはずもなく、一生懸命「あわわわわわ」とかき混ぜるご隠居。この表情がめちゃくちゃ面白かったです。
結局、ムクの皮も投入しましたがお腹を壊した二人。
二人だけでは体がもたないので、生贄!?を探しておりましたが…
伯山さん・大高源吾
初日は天一坊の生い立ち、二日目は怪談。
さすがに義士伝をやらないととの事で、事前告知の通り義士伝となりました。
伯山さんの義士伝を初めて聴いたのは「大高源吾」で、思い出深い一席です。
今回は討ち入り前夜12月13日、まさに両国橋で二人が会った日ですね。
両国橋で二人が会話している景色が高座に見えました。
吉良家討ち入りの際、土屋主税邸の物見で待っていた其角と再会する源吾。
別れは発句徘徊で。
其角「我が雪と思へば軽し笠の上」
源吾「日の恩やたちまち砕く厚氷」
其角「月雪の中や命の捨てどころ」
其角の最後の句に返さず去っていく源吾、痺れました。
土屋主税はこの後赤穂浪士たちからの申し状を受け入れ、吉良方に加勢しないと約束。
塀に沿って高張提灯を掲げたそうです。
「年の瀬や、水の流れと人の身は、あした待たるるその宝船」
両国橋で出逢った俳名「子葉」こと大高源吾と宝井其角がしたためた一句。
その時みすぼらしい恰好をしていた大高源吾に羽織を渡しましたが、あれは松浦壱岐守様からもらったものだったと、詫びに行くことに。
壱岐守は羽織の事に関しては不問にしましたが、源吾の残した句に注目。
この句を誰にも見せてないか確認した上で、「二百六十四大名の荒肝を寒からしめる事態、失態となるやもしれん。まあ、明日にはわかる」と。
家に帰った其角はずっと考え込んでました。
「今日はいっかじゃ?」「12月の13日でございます」「そなたは黙っておれ」
「明日はいっかじゃ?」「14日でございます」「黙っておれというのに」
この妻とのやり取りは面白かったです。
翌日14日、友人の二人と土屋主税宅へ行こうと誘われる其角。
土屋家は浅野家断絶の際、屋敷替えで吉良家の隣になっておりました。
この話を聞いた其角は「あした待たるるその宝船」の真意を知り、土屋家に向かう事になります。
まとめ
討ち入り前夜にふさわしい大高源吾。
元々笑いが多めの義士伝なのでしょうか。
当日の客席に合う陽気な高座でした。
こんな世の中だからこそ必要な演目なのでしょうね。
時々無性に聴きに行きたくなる伯山さん。
次回もふらっと生の高座を聴きたいと思います。
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